歴史人物の子孫を育てる雑草パパ新聞

幕末から明治に活躍した偉人の子孫の成長記録。育児コラム・知育教材・人生の回顧録も記載していきます。

【連載: 漫画『ONE PIECE』ワンピースで学ぶ世界史】第211話 コブラ演説から考える"演説"の世界史〜ゲティスバーグ演説、玉音放送から終戦詔書まで〜

この連載は無料公開されている『ONE PIECE公式漫画アプリ』から中学校社会科の歴史、高校世界史や日本史、そして現代世界情勢への興味・関心を引き出していくプロジェクトです。第211話に登場するエピソードから"演説"について関心を広げます。

※アラバスタ王国内戦終結
[次子5歳年次作: 後報 ]

コブラの演説

第211話では悔やむコーザ、かける言葉が見つからないビビを含めて国民へコブラが語りかけます。

コブラ
「悔やむ事も当然......やりきれぬ思いも当然
 失ったものは大きく 得たものはない
 だがこれは前進である!!戦った相手が
 誰であろうとも 戦いは起き 今終わったのだ!!
 過去を無きものになど誰にもできはしない!!!
 ……………この戦争の上に立ち!!生きて見せよ!!!!
 アラバスタ王国よ!!!!」

こういう王様がいると絶対王政でも良いかな、という気がしてしまいますね。
政治制度は立憲君主制なのか絶対王政なのか定かではないですが、さぞかし体制としては絶対王政でありつつも、王様が国民に親身であるというのがアラバスタ王国なのでしょうね。
この演説を聞いて国民が鼓舞されるわけですが、このような名演説は世界史にも多々あるかと思いまして今回調べてみることにしました。
というわけで今回のテーマは"演説"です。

■演説とは?

まずは概要、定義からいきましょう。
Wikipediaでは以下見つかりました。

演説(えんぜつ)とは、議会や民衆などの前で自らの主義、主張を話すこと[1]。スピーチ(英: Speech)[2]ともいう。演舌とも[3]。
概要

現在の日本においては日本国憲法において結社、表現、思想の自由などが認められているため、公共の場所ならいつでもどこでも常識の範囲内で演説することができる。また、私有地においても相応の許可を取れば演説が可能である。

日本では一般的に、選挙運動期間中に繁華街の駅前などでその選挙区の候補者の演説を聞くことができる。「遊説」(ゆうぜい)ということもある。選挙運動期間以外でも特定の政治団体などが演説会を開催している場合がある。また、議会などで議員が壇上で自らの主張を述べるのも演説と言え、新内閣発足時に慣例として行われる所信表明演説はその全文が新聞に公開されるのが常である。

ja.wikipedia.org

ここでもいくつか歴史的に有名な演説例が記載されていました。

カティリナ弾劾演説
鉄血演説(オットー・フォン・ビスマルクプロイセン首相)
超然演説(内閣総理大臣黒田清隆)
蛮勇演説
桂太郎弾劾演説(1913年(大正2年)2月5日:衆議院議員尾崎行雄)
共和演説(第1次大隈内閣文部大臣・尾崎行雄)
腹切り問答(衆議院議員・浜田国松)
粛軍演説(1936年5月7日)
反軍演説(1940年2月2日:以上2つ衆議院議員斎藤隆夫)
ゲティスバーグ演説1863年11月19日:アメリカ合衆国大統領 エイブラハム・リンカーン
大統領就任演説(1961年1月20日アメリカ合衆国大統領 ジョン・F・ケネディ
ワシントン大行進演説(1963年8月28日:アメリカ合衆国公民権運動指導者 マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
自衛隊決起演説(1970年11月25日:作家・三島由紀夫
大統領離任演説(2017年1月10日:バラク・オバマアメリカ大統領)

今回は終戦時のコブラの演説ですので、内乱や終戦の際の演説を選んで調べていきましょう。

ゲティスバーグ演説1863年

王ではありませんが世界史で有名な演説といえばリンカーンのこの演説です。

ゲティスバーグ演説ゲティスバーグえんぜつ、英: Gettysburg Address)は、南北戦争の最中の1863年11月19日、ペンシルベニア州ゲティスバーグにある国立戦没者墓地の奉献式において、アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが行った演説。アメリカの歴史において、最も有名な演説の一つとされる。

ja.wikipedia.org

なにより有名なのはこのフレーズです。

government of the people, by the people, for the people,

”人民の人民による人民のための政治”というものですね。

世界史の勉強だけだとなかなか全文読む機会がないのでここで引用しておきましょう。

Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.

Now we are engaged in a great civil war, testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure. We are met on a great battle-field of that war. We have come to dedicate a portion of that field, as a final resting place for those who here gave their lives that that nation might live. It is altogether fitting and proper that we should do this. But, in a larger sense, we can not dedicate—we can not consecrate—we can not hallow—this ground. The brave men, living and dead, who struggled here, have consecrated it, far above our poor power to add or detract. The world will little note, nor long remember what we say here, but it can never forget what they did here. It is for us the living, rather, to be dedicated here to the unfinished work which they who fought here have thus far so nobly advanced. It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us—that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion—that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain—that this nation, under God, shall have a new birth of freedom—and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.

(87年前、我々の父祖たちは、自由の精神に育まれ、人はみな平等に創られているという信条に捧げられた新しい国家を、この大陸に誕生させた。 今我々は、一大内戦のさなかにあり、戦うことにより、自由の精神をはぐくみ、自由の心情にささげられたこの国家が、或いは、このようなあらゆる国家が、長く存続することは可能なのかどうかを試しているわけである。われわれはそのような戦争に一大激戦の地で、相会している。われわれはこの国家が生き永らえるようにと、ここで生命を捧げた人々の最後の安息の場所として、この戦場の一部をささげるためにやって来た。我々がそうすることは、まことに適切であり好ましいことである。 しかし、さらに大きな意味で、我々は、この土地を捧げることはできない。清め捧げることもできない。聖別することもできない。足すことも引くこともできない、我々の貧弱な力を遥かに超越し、生き残った者、戦死した者とを問わず、ここで闘った勇敢な人々がすでに、この土地を清めささげているからである。世界は、我々がここで述べることに、さして注意を払わず、長く記憶に留めることもないだろう。しかし、彼らがここで成した事を決して忘れ去ることはできない。ここで戦った人々が気高くもここまで勇敢に推し進めてきた未完の事業にここでささげるべきは、むしろ生きている我々なのである。我々の目の前に残された偉大な事業にここで身を捧げるべきは、むしろ我々自身なのである。 ――それは、名誉ある戦死者たちが、最後の全力を 尽くして身命を捧げた偉大な大義に対して、彼らの後を受け継いで、我々が一層の献身を決意することであり、これらの戦死者の死を決して無駄にしないために、この国に神の下で自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、我々がここで固く決意することである。)
Abraham Lincoln

最後の数行「名誉ある戦死者たちが、最後の全力を 尽くして身命を捧げた偉大な大義に対して、彼らの後を受け継いで、我々が一層の献身を決意することであり、これらの戦死者の死を決して無駄にしないために、この国に神の下で自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、我々がここで固く決意することである。」を読むとコブラの演説ともイメージが重なるところがあるように感じるのは私だけでしょうか。「過去を無きものになど誰にもできはしない!!! ……………この戦争の上に立ち!!生きて見せよ!!!!」というあたりですかね。

日本国憲法に影響を与えていたゲティスバーグ演説

知りませんでした。
何事も調べてみるものですね。ワンピースのおかげです。

1946年、GHQ最高司令官として第二次世界大戦後の日本占領の指揮を執ったダグラス・マッカーサーは、GHQによる憲法草案前文に、このゲティスバーグ演説の有名な一節を織り込んだ。

Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people.
— GHQによる憲法草案前文。強調引用者。

この一文がそのまま和訳され、日本国憲法の前文の一部となった。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
— 日本国憲法前文(一部)強調引用者。

なかなか予想外の展開となりました。
ここまでくると日本国憲法に至る日本国の終戦時のお言葉を知っておきましょう。

玉音放送終戦詔書

やはり我が国の歴史のことなのでしっかり触れておきたいですね。
演説ではなく「終戦詔書」というようです。

玉音放送()とは、天皇の肉声を放送すること。

玉音放送」と言えば、通常1945年(昭和20年)8月15日正午(日本標準時)に、当時日本唯一の放送局だった社団法人日本放送協会(現在のNHKラジオ第1放送)から放送された「大東亜戦争終結詔書」の音読レコード(玉音盤)のラジオ放送を指すことが多く、本項ではこの放送について記述する。
ja.wikipedia.org

複数の方々が作成に関わったようです。

大東亜戦争終結詔書』は「終戦詔書」とも呼ばれ、天皇大権に基づいてポツダム宣言を受諾する勅旨を国民に宣布するために8月14日付で詔として発布され、同日の官報号外にて告示された[5]。大まかな内容は内閣書記官長・迫水久常が作成し、8月9日以降に漢学者・川田瑞穂(内閣嘱託)が起草、さらに14日に安岡正篤(大東亜省顧問)が刪修して完成[注 6]し、同日の内に天皇の裁可があった。大臣副署は当時の内閣総理大臣鈴木貫太郎以下16名。第7案まで議論された。


リンカーンの演説は引用しましたので、終戦詔書も引用しておきましょう。

現代仮名遣い・常用漢字・ひらがな

朕深く世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み 非常の措置をもって時局を収拾せんと欲し ここに忠良なる汝臣民に告ぐ

朕は帝国政府をして 米英支蘇四国に対し その共同宣言を受諾する旨通告せしめたり

そもそも帝国臣民の康寧をはかり 万邦共栄の楽しみを共にするは 皇祖皇宗の遺範にして 朕の拳々措かざる所
さきに米英二国に宣戦せる所以もまた 実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾するに出でて 他国の主権を排し領土を侵すが如きは もとより朕が志にあらず
然るに交戦既に四歳を閲し 朕が陸海将兵の勇戦 朕が百僚有司の励精 朕が一億衆庶の奉公 各々最善を尽くせるに拘らず 戦局必ずしも好転せず
世界の大勢また我に利あらず
しかのみならず 敵は新たに残虐なる爆弾を使用して しきりに無辜を殺傷し 惨害の及ぶところ真に測るべからざるに至る
しかもなお交戦を継続せんか 遂に我が民族の滅亡を招来するのみならず ひいて人類の文明をも破却すべし
かくの如くは 朕何をもってか 億兆の赤子を保し 皇祖皇宗の神霊に謝せんや
是れ 朕が帝国政府をして共同宣言に応せしむるに至れる所以なり
朕は帝国と共に 終始東亜の解放に協力せる諸盟邦に対し 遺憾の意を表せざるを得ず
帝国臣民にして戦陣に死し 職域に殉じ 非命に倒れたる者及び 其の遺族に想いを致せば五内為に裂く
且つ戦傷を負い 災禍を被り 家業を失いたる者の厚生に至りては 朕の深く軫念する所なり
思うに今後帝国の受くべき苦難はもとより尋常にあらず
汝臣民の衷情も朕よく是れを知る
然れども朕は時運の赴く所 堪え難きを堪え 忍び難きを忍び もって万世の為に太平を開かんと欲す
朕はここに国体を護持し得て 忠良なる汝臣民の赤誠に信倚し 常に汝臣民と共に在り
もしそれ情の激する所 濫りに事端を滋くし 或いは同胞排擠 互いに時局を乱り 為に大道を誤り 信義を世界に失うが如きは 朕最も之を戒む
宜しく 挙国一家 子孫相伝え かたく神州の不滅を信じ 任重くして道遠きを念い 総力を将来の建設に傾け 道義を篤くし 志操を堅くし 誓って国体の精華を発揚し世界の進運に後れざらんことを期すべし
汝臣民それ克く朕が意を体せよ

御名御璽

昭和二十年八月十四日
内閣総理大臣鈴木貫太郎

現代語訳

玉音放送の全文 現代語訳。[14]

私は、深く世界の情勢と日本の現状について考え、非常の措置によって今の局面を収拾しようと思い、ここに忠義で善良なあなた方国民に伝える。

私は、帝国政府に、アメリカ・イギリス・中国・ソ連の4国に対して、それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告させた。

そもそも、日本国民の平穏無事を確保し、全ての国々の繁栄の喜びを分かち合うことは、歴代天皇が大切にしてきた教えであり、私が常々心中強く抱き続けているものである。
先にアメリカ・イギリスの2国に宣戦したのも、正に日本の自立と東アジア諸国の安定とを心から願ってのことであり、他国の主権を排除して領土を侵すような事は、元より私の本意ではない。
しかしながら、交戦状態も既に4年を経過し、我が陸海将兵の勇敢な戦い、我が全官僚たちの懸命な働き、我が1億国民の身を捧げての尽力も、それぞれ最善を尽くしてくれたにも関わらず、戦局は必ずしも好転せず、世界の情勢もまた我が国に有利とは言えない。
それ所か、敵国は新たに残虐な爆弾(原子爆弾)を使い、むやみに罪のない人々を殺傷し、その悲惨な被害が及ぶ範囲はまったく計り知れないまでに至っている。
それなのになお戦争を継続すれば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、更には人類の文明をも破滅させるに違いない。
そのようなことになれば、私はいかなる手段で我が子とも言える国民を守り、歴代天皇の御霊(みたま)に詫びることができようか。
これこそが私が日本政府に共同宣言を受諾させるに至った理由である。

私は日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対して、遺憾の意を表さざるを得ない。
日本国民であって戦場で没し、職責の為に亡くなり、戦災で命を失った人々とその遺族に思いをはせれば、我が身が引き裂かれる思いである。
更に、戦傷を負い、戦禍をこうむり、職業や財産を失った人々の生活の再建については、私は深く心を痛めている。
考えて見れば、今後日本の受けるであろう苦難は、言うまでもなく並大抵のものではない。
あなた方国民の本当の気持ちも私はよく分かっている。
然し、私は時の巡り合わせに従い、堪え難くまた忍び難い思いを堪え、永遠に続く未来の為に平和な世を切り開こうと思う。

私は、ここにこうして、この国の形を維持することができ、忠義で善良なあなた方国民の真心を信頼し、常にあなた方国民と共に過ごす事ができる。
感情の高ぶりから節度なく争い事を繰り返したり、或は仲間を陥れたりして互いに世情を混乱させ、その為に人としての道を踏み誤り、世界中から信用を失ったりするような事態は、私が最も強く戒める所である。 
正に国を挙げて一家として団結し、子孫に受け継ぎ、神国日本の不滅を固く信じ、任務は重く道のりは遠いと自覚し、総力を将来の建設のために傾け、踏むべき人の道を外れず、揺るぎない志をしっかりと持って、必ず国のあるべき姿の真価を広く示し、進展する世界の動静には遅れまいとする覚悟を決めなければならない。
あなた方国民は、これら私の意をよく理解して行動して欲しい。

御名御璽

昭和二十年八月十四日

内閣総理大臣鈴木貫太郎

「堪え難きを堪え 忍び難きを忍び もって万世の為に太平を開かんと欲す」という表現がとても心に残ります。
「悔やむ事も当然......やりきれぬ思いも当然 失ったものは大きく 得たものはない」というコブラの表現とも少し重なるところもあるように感じますが、やはり日本国民としては「終戦詔書」により重みを感じます。

以上、今回のテーマは"演説"でした。

・筆者のお薦め参考書

聴き流しで歴史を学べるボカロシリーズ(幼稚園生からパパ&ママまで幅広くオススメ)

■参考文献①今回のテーマを深掘り

本文に挿入しました。

■参考文献②筆者の基本セット

・『ONE PIECE公式漫画アプリ』
ONE PIECE公式漫画アプリ

・教科書、用語集、人物辞典他

・筆者ベストチョイス①

・筆者ベストチョイス②

カードゲームで覚える年号『タイムライン』シリーズと同じくカードゲームで覚える偉人『ソクラテスラ』

■あとがき

コツコツ巻き返していきます。
今日は久しぶりのPCからの寄稿でした。


ご覧いただきありがとうございました!受験勉強や教養の向上に活用いただければ幸いです。
その他関連シリーズもぜひご覧ください。
漫画『ONE PIECE』ワンピースから始める世界史 カテゴリーの記事一覧 - 歴史人物の子孫を育てるパパ新聞