歴史人物の子孫を育てる雑草パパ新聞

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【連載: 漫画『ONE PIECE』ワンピースで学ぶ世界史】第142話 ワポル様はなぜ偉い?チェスの思想はイブン・ハルドゥーン由来?ドルトンの懸念から考える"王権"の世界史〜古代エジプト/シュメール/イスラエル、中世イブン・ハルドゥーン、マキャベリ、トマス・ホッブズまで〜

この連載は無料公開されている『ONE PIECE公式漫画アプリ』から中学校社会科の歴史、高校世界史や日本史、そして現代世界情勢への興味・関心を引き出していくプロジェクトです。第142話に登場するエピソードから"王権"について関心を広げます。

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[次子5歳年次作: ワポルを正当化するチェス]

■国民との溝を懸念するドルトン、反論するチェス

第142話ではドラム王国の昔話が紹介されます。そして国民たちとの溝を懸念するドルトンにチェスがこう反論します。

チェス「"国"という支配から逃れた人間はまるで密林に放り出されたうさぎの様にたちまち命を落とすだろう ワポル様は国民を固く支配することで結局国を守っておられるのだ」

どうでしょう。この考えを政治家や政府関係者が発言したら日本社会では大問題ですね。
そして実際、国民としてはどうでしょうか?国家でもないコミュニティに生み落とされた人間は生きていけないのでしょうか。
そして国や国王というものはどれだけ"固く"支配することが望ましいのでしょう。
今回は王様がそもそもどんな理屈で国を統治するのか?について考えます。

というわけで今回のテーマは"王権"です。

■王権とは?

まずは概要、定義からいきましょう。
Wikipediaにはこうありました。

王権(おうけん)は、人々に君臨する王の権力、統治権のこと。

王権 - Wikipedia

シンプルですね。
それではなんで統治権や権力をもつことが正当化されるのでしょうか。

■王権の前提となる"国家"

国王、なわけですから国があるわけですね。

国家にはさまざまな定義があたえられるが、一般に、国家は、農耕など生産経済の発明に触発された歴史上の大変動に惹起されて創り出された社会集団であり、

一定の領域
そこに居住する人びと(民衆)
それを統治する主権者
の三要素を不可欠なものとして有する政治機構である[1]。

■王権が信仰や伝承の神に由来する古代国家

日本も含めて大本はやはり「神様だから」というのが王権を正当化するロジックとしては一般的なようです。

初期国家の主権者は多くの場合「王」であり、王は、ほとんどすべての民族社会において、国家の成立とともにその最高権力を保持する者として出現する。

この「王」のもつ権力が王権であり、王権の起源は、神に出自するという信仰や伝承に由来することが多い。

ここから「王は神の子」というような王の神聖性の観念が生まれ、王は宗教的に神格化されることとなる。

太陽神と同一視される古代エジプトの王ファラオはその典型であり、日本においても天武天皇の時代には「大君は神にしませば」で始まる和歌が盛んに作られた。

古代の王はまた、司祭者的性格を有することも多く、メソポタミア文明におけるシュメールの諸王[2]や古代イスラエルの王にその典型が認められる[3]。

■動物的性質を持つ人間を抑えるための王権

中世になる信仰とは異なる別の視点が出てくる様です。

中世以降は、王の神聖性から距離を置いた理論が生まれる。

イスラーム世界最大の歴史家であるイブン・ハルドゥーンは14世紀後半に書かれた『歴史序説』において、王権は人間にとって必要不可欠であるとした。

人間はお互いに対する権利侵害や相互の確執などにみられる動物的性質を持っているために、それを抑制する者が必要であり、それが統治者としての王であると述べた[4]。

また、ルネサンス期のニッコロ・マキャヴェッリは『君主論』を著し、宗教や道徳と切り離された政治の中での君主の役割を論じた。

この赤字の部分はまさにチェスの王権思想に近いですね。

■チェスの思想は社会契約説へ

このイブンハルドゥーンの考えがかの有名な『リヴァイアサン』につながるのですね。

イブン・ハルドゥーンに通じる王権観を自然権の視点から捉え、社会契約説を構築したのがトマス・ホッブズによる17世紀中葉の『リヴァイアサン』であった。

ホッブズはその中で、人間の自然状態を「万人の万人による闘争」であるとし、この混乱状況を避けるためには、「人間が天賦の権利として持ちうる自然権を政府[5]に対してすべて譲渡する(という社会契約をする)べきである」と述べ、絶対王政を擁護しながらも、それ以前の王権神授説における超自然的な要素を否定した。

どうでしょうか、この万人を"権利侵害や相互の確執などにみられる動物的性質を持っている"要するに野蛮な存在だと捉えると、こういった思想も一理ありますかね。

愚民観、とでもいいましょうか。
愚民だから王権なんだ、というロジックもあれば、逆に支配の効率化のために政策的に愚民化を進める"愚民政策"もありますね。

ワポルの様な王様だったら困りますが、ネフェルタリ家のコブラやビビだったらどうでしょうか?時間をかけて投票するよりは効率的で安定するかもしれませんね。でもクーデターが起きたら?突然死したら?

今ある民主主義も案外悪くないかもしれませんね。
というわけで今日は王権について学びました。

■参考文献①今回のテーマを深掘り

本文に挿入しました。

■参考文献②筆者の基本セット

・『ONE PIECE公式漫画アプリ』
ONE PIECE公式漫画アプリ

・教科書、用語集、人物辞典他

・筆者ベストチョイス①

聴き流しで歴史を学べるボカロシリーズ(幼稚園生からパパ&ママまで幅広くオススメ)

・筆者ベストチョイス②

カードゲームで覚える年号『タイムライン』シリーズと同じくカードゲームで覚える偉人『ソクラテスラ』

■あとがき

なんとか週一継続中です。
コツコツやっていきます。

チェスの発言はなかなか考えさせられるテーマでしたね。尾田先生も世界史からこういったキャラの発言の着想を得たのでしょうかね。


ご覧いただきありがとうございました!受験勉強や教養の向上に活用いただければ幸いです。
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