この連載は無料公開されている『ONE PIECE公式漫画アプリ』から中学校社会科の歴史、高校世界史や日本史、そして現代世界情勢への興味・関心を引き出していくプロジェクトです。第69〜95話に登場する"万物の霊長"の発言から儒教の歴史について関心を広げます。
[長子作: アーロンに悪態つくゾロ]
■アーロンの言う『万物の霊長』
第71話ではアーロンに"半魚野郎"と睨みつけるゾロに対し、アーロンが余裕の態度でゾロに諭します。
アーロン「天性に持つ数々の人間を超える能力がその証‼︎『万物の霊長』は魚人だと頭に叩き込んどけ‼︎! 人間が魚人に逆らうってのは"自然の摂理"に逆らうも同然だ‼︎!」
ナミ「そのバカみたいな持論は聞き飽きたわ アーロン」
ゾロ「!!?っな…」
というわけで今回のテーマは『万物の霊長』です。
■『万物の霊長』とは?
まずは概要、定義からいきましょう。
Wikipediaには出てないので、他のサイトではこうありました。
《「書経」泰誓上から》万物の中で最もすぐれているもの、すなわち人間のこと。
万物の霊長とは - Weblio辞書
まあアーロンが"人間を超える"のが魚人だと述べているので、なんか全ての生き物の中で一番優れている存在、という意味かと理解は出来ますね。
そもそも"霊長"って何でしょうね。霊長類の霊長でしょうか。
霊妙な力を備えていて、他の中で最もすぐれているもの。「万物の霊長」
というわけで、予想通り優れたものを言うようです。
■「書経」って何?
さてこの『万物の霊長』という言葉の説明で気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、この言葉は「書経」から来ていたんですね。
「書経」について調べてみましょう。
ここでようやくWikipediaからの引用です。
『書経』(しょきょう)は、中国古代の歴史書で、伝説の聖人である堯・舜から夏・殷・周王朝までの天子や諸侯の政治上の心構えや訓戒・戦いに臨んでの檄文などが記載されている[1]。
『尚書』または単に『書』とも呼ばれ、儒教の重要な経典である五経の一つでもある[1]。
内容に違いがある2種類の本文が伝わっており、それぞれを「古文尚書」・「今文尚書」と呼んで区別する[1]。
現代に伝わっている「古文尚書」は由来に偽りがあることが断定されているので「偽古文尚書」とも呼ばれる[2]。もともとの「古文尚書」は失われており、現代には伝わっていない[1]。
というわけで儒教の経典なのでした。
世界史でも出てくる「四書五経」の一つですね。
四書五経(ししょごきょう)は、儒教の経書の中で特に重要とされる四書と五経の総称。ただしこのうち『大学』『中庸』はもともと『礼記』の一章を独立させたものである。
要綱 編集
君子が国家や政治に対する志を述べる大説として日常の出来事に関する意見・主張や噂話など虚構・空想の話を書く小説と区別される。
四書は『論語』『大学』『中庸』『孟子』、五経は『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』をいい、五経を以て四書よりも高しとする(「礼記」の成立受容史については「三礼」の項を参照)。「楽経」を含めて四書六経ともいう。
中国国内だけでなく、日本や韓国でも広く講義された。
■儒教って何?
というわけで、『万物の霊長』という言葉は「書経」の言葉で、「書経」とは儒教の経典「四書五経」の一つなのでした。
ここまで来ると改めて知りたいのが儒教です。
Wikipediaにはこうあります。
儒教(じゅきょう、英: confucianism)は、孔子を始祖とする思考・信仰の体系。紀元前の中国に興り、東アジア各国で2000年以上に渡り強い影響力を持つ。その学問的側面から儒学、思想的側面からは名教・礼教ともいう。大成者の孔子から、孔教・孔子教とも呼ぶ。中国では、哲学・思想としては儒家思想という。
そしてどんな教えだっかというとこちらです。
漢字ばかりでなかなか難解であります。
東周春秋時代、魯の孔子によって体系化され、堯・舜、文武周公の古えの君子の政治を理想の時代として祖述し[1]、『周礼』を保存する使命を背負った、仁義の道を実践し、上下秩序の弁別を唱えた。
その教団は諸子百家の一家となって儒家となり、(支配者の)徳による王道で天下を治めるべきであり、同時代の(支配者の)武力による覇道を批判し、事実、その様に歴史が推移してきたとする徳治主義を主張した。
その儒教が漢代、国家の教学として認定された事によって成立した。
宋代以降に朱子学によって国家的規模での宋明理学体系に纏め上げられていった。
宋明理学の特徴は簡潔に述べるならば、「修己治人」あるいは、『大学』にある「修身、斉家、治国、平天下」であり、「経世済民」の教えである。
なかなか面白いキーワードが出てきましたね。
「仁義」です。
■仁義といえば…ジンベイ?
仁義と聞いて思い出すのが、「仁義なき戦い」という映画でありまして、筆者は見たことはありませんが仁侠映画の一つと言われますね。
ジンベイは"海侠のジンベイ"と呼ばれており、仁義を重んじるキャラクターなのです。
任侠(にんきょう、任俠)とは本来、仁義を重んじ、困っていたり苦しんでいたりする人を見ると放っておけず、彼らを助けるために体を張る自己犠牲的精神や人の性質を指す語。
現代的にはヤクザと重複する面もあるが依拠する信念を違える。
また、ヤクザ史研究家の藤田五郎の著述によれば、正しい任侠精神とは正邪の分別と勧善懲悪にあるという[1]。
仁侠(じんきょう)、義侠心(ぎきょうしん)、侠気(きょうき)、男気(おとこぎ)などともいう。
任侠 - Wikipedia
アーロンは『万物の霊長』、ジンベイは"海峡"と称され『仁義』、どちらも儒教の世界観の言葉でした。
魚人の中で実は『四書五経』か流行っていたのかもしれませんね。
というわけで今回のテーマ『万物の霊長』から儒教の世界を掘り下げてみました。
■参考文献①今回のテーマを深掘り
・筆者ベストチョイス①
聴き流しで歴史を学べるボカロシリーズ(幼稚園生からパパ&ママまで幅広くオススメ)
■あとがき
今から思うと「人を超える魚人こそが『万物の霊長』」という前提には人間が一般的に『万物の霊長』とみなされていることが前提になっているように思われます。
でも果たして人類・ヒトは『万物の霊長』なのでしょうか。
Wikipediaの「人間」にはこうありました。
近代 編集
人間は(肉体はともかくとして)精神の働きという点であらゆる存在に対して秀でているという考え方から「万物の霊長(英語: The Lord of Creation)」とさかんに呼ばれた(霊長とは、霊すなわち精神的に優れている、の意味)[14]。
人間 - Wikipedia
"人間観の遷移"という項目に上記があります。古くは書経にあるわけですが、近代からこういった人間観は広まってきたようです。
一方でWikipediaの「ヒト」を調べるとこうあります。
ヒトとは、いわゆる人間のことで、学名がホモ・サピエンスあるいはホモ・サピエンス・サピエンスとされている動物の標準和名である。Homo sapiens は「知恵のある人」という意味である。
古来「人は万物の霊長であり[3]、そのため人は他の動物、さらには他の全ての生物から区別される」という考えは普通に見られるが、生物学的にはそのような判断はない。「ヒトの祖先はサルである」と言われることもあるが、生物学的には、ヒトはサル目ヒト科ヒト属に属する、と考えられており、「サルから別の生物へ進化した」という説を証明する決定的な証拠はまだなく、依然としてサル属の一種と見なされている。
というわけで我々は単なるサル属の一種として謙虚にみんなで仲良く暮らしていければ良いのですが、現実は未だに戦争やら紛争が無くなりません。
昔に比べれば人類は平和的に進化しているとことですけどね。
暴力の人類史(上・下) スティーブン・ピンカー著: 日本経済新聞
それでも米ソ対立にしても、米中新冷戦にしてもいつでも御山の大将になりたいのが人間のサガなんでしょうか。結局我々はサルだから。
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