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【連載: 漫画『ONE PIECE』ワンピースで学ぶ世界史】第23〜41話 『誰がために鐘は鳴る』狂う計画、クロとヘミングウェイ、スペイン内戦、1954年の現代史、そしてジョン・ダンからあなたへ(39話より)

この連載は無料公開されている『ONE PIECE公式漫画アプリ』から中学校社会科の歴史、高校世界史や日本史、そして現代世界情勢への興味・関心を引き出していくプロジェクトです。今回は第39話『誰がために鐘は鳴る』からヘミングウェイ、スペイン内戦、1954年の現代史、ジョン・ダンについて関心を広げます。

[長子作:ゴムゴムの鐘!!!!]

■キャプテン・クロの計画を打破るゴムゴムの鐘

39話でキャプテンクロの杓死を捉え、ルフィがクロに最後の一撃を加えます。

ルフィ「ゴムゴムの…」
クロ「ま…まさか」
「おれの計画は…」
「おれの計画は 絶対に狂わないっ!!!」
ルフィ「鐘っ!!!!」
クロ「!!!?」

ガゴォン!!!

■『誰がために鐘は鳴る』といえばアーネスト・ヘミングウェイの長編小説

尾田先生は何かメッセージを込めてこの回のテーマを設定されたと思うのですが、みなさんはこの回に何故この題名がついたと思いますか?

まずこの『誰がために鐘は鳴る』ですが、世界史を学んだものがこの題名でピンとくるのがまずこのヘミングウェイの長編小説なのです。

Wikipediaにはこうあります。

スペイン内戦を舞台とし、ロバート・ジョーダンとマリアの恋を描く。題名はジョン・ダンの説教の一節を引用している。1939年3月にこの作品を書き始め、翌40年に発表された。

1943年にゲイリー・クーパーイングリッド・バーグマンの主演で映画化もされた(これの邦題は『誰が為に鐘は鳴る』と、為が漢字になっている)。

1978年には宝塚歌劇団によってミュージカル化された。2010年、2011年に再演。(詳細は「誰がために鐘は鳴る (宝塚歌劇)」を参照)

誰がために鐘は鳴る - Wikipedia

ジョン・ダンについては後述しますが、まずはヘミングウェイの長編小説について見ていきましょう。

■『誰がために鐘は鳴る』のあらすじとスペイン内戦

さてヘミングウェイの長編小説ですが、キャプテン・クロとの戦いと何かつながりがあるのでしょうか。あらすじを見てみましょう。
 

ファシスト軍としてスペイン内戦に参加したロバート・ジョーダンは戦略上重要となる橋梁を爆破する任務を背負い、パブロが率いるゲリラ隊に協力を求めた。

そこでファシストに両親を殺され、ゲリラ隊にかくまわれていた娘マリアと知り合い、恋に落ちた。やがて、彼は作戦を進めていくうちに、敵の作戦が変更となり、自分の任務である橋梁の爆破が無意味になることを知った。

しかし連絡の不備から作戦は中止されず、彼は無駄になったことを知りながら橋梁を爆破し、瀕死の重傷を負い、仲間を逃がして自分は死に臨んだ。

何かキャプテン・クロvsルフィの戦いとの関係が見えてきたでしょうか?ちなみに最後にジョン・ダンにたどり着くまで筆者はあまりピンときませんでした。

ここで出てくる歴史ワードとしてスペイン内戦について学んでおきましょう。

スペイン内戦は、スペイン陸軍の将軍グループがスペイン第二共和国政府に対してクーデターを起こしたことにより始まったスペイン国内の抗争だった。

内戦は1936年7月17日から1939年4月1日まで続き、スペイン国土を荒廃させ、共和国政府を打倒した反乱軍側の勝利で終結し、フランシスコ・フランコに率いられた独裁政治を樹立した。

フランコ政権の政党ファランヘ党は自らの影響力を拡大し、フランコ政権下で完全なファシスト体制への転換を目指した。


内戦中、政府側の共和国派(レプブリカーノス)の人民戦線軍はソビエト連邦とメキシコの支援を得、コミンテルンが各国共産党を使って、西欧諸国の個人から多くの義勇兵(その大半は共産党員)[1]を得た一方、反乱軍側である民族独立主義派(ナシオナーレス)の国民戦線軍は隣国ポルトガルの支援だけでなく、イタリアとドイツからも支援を得た。

この戦争は第二次世界大戦前夜の国際関係の緊張を高めた。


この戦争では特に戦車および空からの爆撃が、ヨーロッパの戦場で主要な役割を果たし注目された。

戦場マスコミ報道の出現は空前のレベルで人々の注目を集めた(小説家のアーネスト・ヘミングウェイジョージ・オーウェル、写真家ロバート・キャパらが関わった)。

そのため、この戦争は激しい感情的対立と政治的分裂を引き起こし、双方の側の犯した虐殺行為が知れわたり有名になった。

他の内戦の場合と同様にこのスペイン内戦でも家族内、隣近所、友達同士が敵味方に別れた。

共和国派は新しい反宗教な共産主義体制を支持し、反乱軍側の民族独立主義派は特定複数民族グループと古来のカトリックキリスト教全体主義体制を支持し、別れて争った。

戦闘員以外にも多数の市民が政治的、宗教的立場の違いのために双方から殺害され、さらに1939年に戦争が終結したとき、敗北した共和国派は勝利した民族独立派によって迫害された。

人民戦線派の反カトリック姿勢は徹底しており、内戦中、人民戦線派支配領域で殺害された聖職者は、その1割に相当する7000人に上り、その大半は内戦当初の1936年秋に殺害された[2]。


邦訳についてはスペイン内乱、スペイン市民戦争とも表記され、特に近年は後者が用いられることも多い。
スペイン内戦 - Wikipedia

どうでしょうか、キャプテン・クロのお話とヘミングウェイのお話は繋がってきたでしょうか。

■スペイン内戦を駆け巡った行動派作家、アーネスト・ヘミングウェイは1954年のノーベル文学賞受賞者

このヘミングウェイさんは行動派の作家さんでして、アメリカ人ではありますがスペイン内戦に積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにしたようです。

アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(Ernest Miller Hemingway、1899年7月21日 - 1961年7月2日)は、アメリカ合衆国出身の小説家・詩人。

ヘミングウェイによって創作された独特で、シンプルな文体は、冒険的な生活や一般的なイメージとともに、20世紀の文学界と人々のライフスタイルに多大な影響を与えた。

ヘミングウェイは、ほとんどの作品を1920年代中期から1950年代中期に書き上げて、1954年にノーベル文学賞を受賞するに至った。 

彼は、6つの短編集を含めて7冊の小説と2冊のノンフィクションを出版した。

死後、3冊の小説、4つの短編集、3冊のノンフィクションが発表された。これらは、アメリカ文学の古典として考えられている。

(一部省略)

行動派の作家で、1930年代には人民戦線政府側としてスペイン内戦にも積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにした。

誰がために鐘は鳴る』『武器よさらば』などはそうした経験の賜物。
当時のハリウッドに映画化の素材を提供した。

短編には簡潔文体の作品が多く、これらはダシール・ハメットレイモンド・チャンドラーと後に続くハードボイルド文学の原点とされている。

1954年、『老人と海』が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞。
同年、二度の航空機事故に遭う。二度とも奇跡的に生還したが、重傷を負い授賞式には出られなかった。
以降、これまでの売りであった肉体的な頑強さや、行動的な面を取り戻すことはなかった。


アーネスト・ヘミングウェイ - Wikipedia

誰がために鐘は鳴る』ではありませんが、『老人と海から』でノーベル文学賞を受賞したのですね。

■1954年の世界情勢

さてヘミングウェイノーベル文学賞を受賞した1954年はどんな年だったのでしょうか。

現代史として重い出来事としては第一次インドシナ戦争でしょうか。ディエンビエンフーの戦いが挙げられています。
ノーベル平和賞は筆者の思い出深いUNHCRでした。

5月7日 - フランス軍インドシナ戦争の拠点ディエンビエンフーが陥落
ディエンビエンフーの戦い - Wikipedia

6月17日 - 中華人民共和国とイギリスが国交樹立。

6月27日 - モスクワ近郊オブニンスクで世界初の原子力発電所が運転を開始

7月1日 - 自衛隊発足。

11月1日 - アルジェリア戦争が始まる

■『誰がために鐘は鳴る』は結局のところ誰のために鐘が鳴るのか?

ここで最初のジョン・ダンに戻ります。ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の題名はジョン・ダンの説教の一節を引用していることが分かりましたので、原作者について調べてみましょう。

ジョン・ダン(John Donne, 1572年 - 1631年3月31日)は、イングランドの詩人、著作家、後半生はイングランド国教会の司祭。

カトリックの家の生まれで、イングランド国教会に改宗するまで宗教的迫害を経験した。

優れた教養と詩の才能にもかかわらず、長く貧困の中で生き、富裕な友人たちに頼らざるを得なかった。

1615年に国教会の司祭になり、1621年にセント・ポール大聖堂の首席司祭(Dean of St Paul's)に任ぜられた。

そういった背景がダンの文学作品(初期の恋愛詩・風刺詩から晩年の宗教的講話に至るまで)に反映しているという意見がある。


大胆な機知と複雑な言語を駆使し、恋愛詩、宗教詩、講話を書く。

形而上詩人の先駆者とされる。

代表作に『蚤』、『日の出』といった唄とソネット、「死よ驕るなかれ」の一節で知られる『聖なるソネット10番』や『冠』といった宗教詩がある。

T・S・エリオットらに影響を与え、ヘミングウェイ誰がために鐘は鳴る(For Whom the Bell Tolls)』のタイトルはダンの説教の一節から取られている。

(省略)

1623年の11月末または12月頭、ダンは重病で死にかけた。
おそらく発疹チフスか、風邪に七日熱を併発したか、そのどちらかと思われる。

回復までの間、ダンは健康、痛み、病気についての一連の瞑想と祈りを書き、それは1624年に『不意に発生する事態に関する瞑想(Devotions upon Emergent Occasions)』という題名で出版された。

その中の17番は、「誰がために鐘は鳴る(for whom the bell tolls)」および「なんぴとも一島嶼にてはあらず(no man is an island)」というフレーズで知られている。

ジョン・ダン - Wikipedia

前々回に触れたT・S・エリオットが登場しましたね。
【連載: 漫画『ONE PIECE』ワンピースで学ぶ世界史】第23〜41話 クロネコ海賊団とT・S・エリオット作『キャッツ(Cats)』、そして1948年ノーベル賞 - 歴史人物の子孫を育てるパパ新聞

結局Wikipediaでは原文が見つかりませんでしたので他サイトをご紹介します。
’N‚ª‚½‚߂ɏà‚͖‚é(ƒWƒ‡ƒ“Eƒ_ƒ“)

For Whom the Bell Tolls


No man is an island, entire of itself;

every man is a piece of the continent,

a part of the main.


If a clod be washed away by the sea,

Europe is the less,

as well as if a promontorywere,

as well as if a manor of thy friend's or of thine own were:


any man's death diminishes me,

because I am involved in mankind,


and therefore never send to know

for whom the bells tolls;

it tolls for thee.


John Donne
Devotions upon
Emergent Occasions, no. 17
(Meditation)
1624 (published)



誰がために鐘は鳴る

人は離れ小島ではない

一人で独立してはいない

人は皆大陸の一部


もしその土が波に洗われると

ヨーロッパ大陸は狭くなっていく

さながら岬が波に削られていくように

あなたの友やあなたの土地が

波に流されていくように


誰かが死ぬのもこれに似て

我が身を削られるのも同じ

なぜなら自らも人類の一部


ゆえに問う無かれ

誰がために弔いの鐘は鳴るのかと

それが鳴るのはあなたのため


(浜野聡訳)

 
やっとたどり着きましたが、鐘がなるのは「汝(なんじ)のため」なのですね。
英文ではtheeとありyouではありませんが、英語の古語といったところでしょうか。

thou:汝は、汝が(主格)
thy:汝の (所有格)
thee:汝に、そなたに (目的格)
thine:汝のもの、そなたのもの (所有目的格)

■『誰がために鐘は鳴る』という題名やタイトルにすることのメッセージを考える

「ゆえに問う無かれ
 誰がために弔いの鐘は鳴るのかと
 それが鳴るのはあなたのため」
から考えると、自分のこととは関係ないという前提に立って「あの鐘誰のために鳴ってるんですか?」と尋ねる人間に対して、そもそも他者との相互関係性は切り離せないと考える立場から「結局巡りめぐって他者の死はあなたにも影響することだから、あなたの為に鳴っているんです、あなたと無関係なものに対して鳴っているのではないのです」ということなのでしょう。

他者に無関心になるな、ということは他者に関心を持ちなさい、とも考えられることから、他者のために命をかけるヘミングウェイの長編小説にも繋がったのでしょうか。

そしてヘミングウェイ自身も米国人でありながはスペイン内戦に関与して、行動を通じて関心をもつことを示していったのかもしれません。

そしてキャプテン・クロについてですが、同じ海賊団の船員たちに冷徹な無関心さを示して斬撃を繰り返すクロに対して、ルフィは「お前みたいな海賊には絶対におれはならねェ」と言い放ちます。仲間を大切にする、たまたま出会った村人たちを大切にする、そんなルフィがクロに「お前は間違っている!」と言わんばかりの大きな鐘を鳴らすというのがこの題名がついた所以なのかなぁと解釈しました。


「人は離れ小島ではない
 一人で独立してはいない」
とあるように、このワンピースも「仲間」とか「ひとつなぎ」とか関連性や連携性、継続/持続性がキーの一つにあるように感じます。


あとは「自由」とか「意志」といったものも深いベースのテーマ性をもっているのかなぁと感じるワンピースであります。

■参考文献①今回のテーマを深掘り

■参考文献②筆者の基本セット

・『ONE PIECE公式漫画アプリ』
ONE PIECE公式漫画アプリ

・教科書、用語集、人物辞典他

■あとがき

というわけでそろそろキャプテン・クロシリーズも終わりですが、ウソップとイソップから始まり、キャッツ、誰がために鐘は鳴る、など文学系のつながりを感じるテーマが多かったように感じますね。

Wikipediaや電子辞書など最近とても便利ですが、やはり文学や名言、詩などの意味を考えていくには原文を読むのが一番ですね。筆者自身も今回改めて深掘り勉強になりました。

ご覧いただきありがとうございました!
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